坐骨神経痛や五十肩、頭痛が良くならないとお悩みの方へ。その痛みの原因は骨や神経ではなく「筋肉・筋膜」の異常(MPS)かもしれません。一般的な症状と筋筋膜性疼痛症候群(MPS)、そしてトリガーポイントとの深い関係性を分かりやすく解説します。

トリガーポイント鍼灸院feel院長の佐野です。
「整形外科でレントゲンやMRIを撮ったけれど『異常なし』と言われた」
「坐骨神経痛や五十肩と言われ、湿布や痛み止めを続けているがなかなか良くならない」
このような長引く痛みに悩まされていませんか?
実は、レントゲンやMRIといった画像検査では写りにくい「筋肉」や「筋膜(筋肉を包む膜)」の異常が、痛みの真の原因であるケースが多々あります。このように、筋肉や筋膜のトラブルによって生じる慢性的な痛みの病態を、専門的には「筋筋膜性疼痛症候群(MPS:Myofascial Pain Syndrome)」と呼びます。
今回は、このMPSの基本的な仕組みと、皆さんがよく耳にする「一般的な症状」との深い関係性について分かりやすく解説します。
1. 筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とは?
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とは、一言で言えば「筋肉や筋膜にできた特殊なコリ(微小な損傷や血流不足)が原因で、体中に強い痛みやしびれを引き起こす疾患」です。
長時間の同じ姿勢、過度な負荷、日常のストレスなどによって筋肉に過剰な負担がかかり続けると、筋肉の一部が硬く縮こまり、血流不足(虚血状態)に陥ります。すると、そこに「トリガーポイント(痛みの引き金となる点)」と呼ばれる、センサーが過敏化した痛みの発信源が形成されてしまいます。
MPSの最大の特徴:「関連痛」
トリガーポイントの最も厄介な特徴は、「そこから離れた場所に痛みを飛ばす(関連痛)」という性質です。 例えば、「お尻の筋肉」にトリガーポイントができると、太ももや足のほうまで鋭い痛みやしびれが走ります。これにより、多くの人が「神経が圧迫されているのではないか」と誤認してしまうのです。
2. 一般症状だと思ったらMPSだった?よくある4つのケース
MPSという言葉自体はあまり耳馴染みがないかもしれませんが、皆さんが日常で悩む多くの症状の「真の正体」であるケースが非常に多いのが特徴です。
① 坐骨神経痛だと思ったらMPSだった
お尻から足にかけてしびれや痛みが出ると、一般的には「椎間板ヘルニア」や「坐骨神経痛」と診断されがちです。しかし、画像診断で骨や関節に異常があっても、それが痛みの直接原因とは限りません。
多くの場合、お尻の奥にある筋肉(梨状筋など)や、腰の筋肉(腰方形筋など)にできたトリガーポイントが、足へ向かってしびれや痛みを飛ばしています。筋肉・筋膜のロックを解除することで、長年の骨のせいだと思われていたしびれが速やかに改善することは珍しくありません。
② 五十肩(肩関節周囲炎)とMPS
腕が上がらない、夜中に肩が痛くて目が覚める(夜間痛)といった「五十肩」。これも関節だけの問題ではなく、肩甲骨の周りにある筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋など)の筋膜が緻密化し、トリガーポイント化していることが原因の多くを占めます。 関節を無理に動かすのではなく、肩周辺の筋筋膜の緊張を丁寧にほどいていくことで、可動域が広がり、夜間の激しい痛みからも解放されます。
③ 頭痛と首・肩のトリガーポイント
慢性的な頭痛(特に緊張型頭痛)の多くは、頭の中に原因があるのではなく、首や肩の筋肉に原因があります。 肩の僧帽筋(そうぼうきん)や首の筋肉にトリガーポイントができると、その痛みは後頭部や側頭部、目の奥へと響きます。専門書籍『筋膜への徒手療法』などの医学的知見においても、首・肩周辺の筋膜の連続性や機能障害が上部体幹や頭部に影響を与えることが示されています。首や肩の筋膜を適切にリリースすることで、長年の頭痛がスーッと消えていくケースは非常に多いのです。
④ 股関節痛と中臀筋(ちゅうでんきん)
歩くときや階段の上り下りで股関節が痛む場合、変形性股関節症などを疑う方が多いですが、実際にはお尻の外側にある中臀筋(ちゅうでんきん)という筋肉が硬化しているケースが多々あります。 中臀筋は骨盤を支え、歩行時の左右バランスを保つ重要な筋肉です。ここにトラブルが起きると、股関節の前側や足の付け根に痛みを放散します。骨や軟骨の変形そのものを変えることはできなくても、周囲の筋肉・筋膜の機能を回復させることで、痛みのないスムーズな歩行を取り戻すことが可能です。
3. 局所だけでなく「身体全体の機能」を踏まえたアプローチを
痛む場所(例:足のしびれ、目の奥の頭痛)だけに執着してマッサージをしても、一時的な気休めにしかなりません。筋膜は頭から足の先まで三次元のネットワークとして全身で繋がっているため、全く別の場所にあるトリガーポイントが真犯人であるケースが多いからです。
当院では、患者様が訴える局所の痛みはもちろんのこと、姿勢や動きの癖から「なぜそこに負担がかかり続けているのか」という身体全体の機能的なつながりを分析し、根本的な原因に対して的確な鍼灸・マッサージ治療を行います。
「もう歳だから」「骨が変形しているから」と痛みを諦める前に、筋肉と筋膜の専門家である当院にぜひ一度ご相談ください。
次回へつづく・・・
=佐野 聖(さの ひじり)/ はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長=
1995年、鍼灸マッサージ師(国家資格)取得。整形外科勤務を経て臨床経験を積み、2003年に横浜にて「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を開業。これまでの臨床の中で、痛みの多くが筋肉や筋膜に由来することに着目し、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)およびトリガーポイントに特化した治療を専門としている。肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、慢性的な痛みに対して、局所だけでなく身体全体の機能を踏まえたアプローチを行い、改善をサポートしてきた。その治療技術と臨床経験は、鍼灸専門誌『医道の日本』において特集掲載された。
