新型コロナウイルス感染症が流行して以降、さまざまな後遺症に悩む方が増えています。その中でも「咳がなかなか止まらない」という症状を訴えて来院される方が、当院でも少なくありません。
今回ご紹介するのは、30代女性のケースです。
3年前に新型コロナに罹患して以降、咳が長く続いており、吸引タイプの咳止めを服用しながら日常を過ごされていました。
医師からは明確な異常は指摘されず、「咳喘息」や「アレルギー」などの可能性も示されつつ、はっきりとした原因はわからないまま…。
しかし、身体を丁寧に触診していくと、肩甲間部・大胸筋・小胸筋・前鋸筋などに明らかな筋硬結が見られました。

これらは、長期間にわたる咳動作によって繰り返し緊張を強いられた筋肉です。実際にトリガーポイント鍼治療を行ったところ、5回目の治療時には「ほとんど咳が出なくなった」とおっしゃっていただけるまでに改善が見られました。
トリガーポイントの視点から見る「長引く咳」
肩や胸の筋肉は、咳をする際に必ず使われる部位です。長期間の咳により筋緊張が慢性化し、トリガーポイントが形成されることで、「咳の原因ではなく、結果としての筋性トラブル」が持続的な症状を引き起こしている場合があります。
このようなケースでは、吸入薬などの内科的アプローチに加え、筋肉への直接的な治療が症状の改善に大きく寄与することがあります。
コロナ後遺症としての咳の増加について
厚生労働省や世界の医学誌でも、新型コロナウイルス感染後に「慢性の咳」を訴える患者が一定数存在することが報告されています。
実際、米国Chest誌(2021年)では、COVID-19から回復した患者の約14%に長期的な咳が残るとされており、これらは**「ロングCOVID(Long COVID)」の一部**として認識されています。
当院でも、コロナ後の咳に関する相談は年々増えており、筋骨格系への視点を持った鍼灸治療が役立つ場面が確実に増えてきています。
同じような症状でお悩みの方へ
「風邪は治ったのに、咳だけが残っている」
「いつも咳が続いていて、胸まわりや背中が重い」
そんな方は、呼吸動作に関与する筋肉のトリガーポイントが関係しているかもしれません。
西洋医学的な治療で改善しなかった症状に、別の角度からアプローチしてみませんか?
『この記事の執筆者:佐野 聖(はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長)』
佐野聖は1995年に鍼灸マッサージ師(国家資格)を取得。8年間にわたり整形外科クリニックに勤務し、医師との連携による臨床経験を重ねたのち、2003年に横浜にて鍼灸マッサージ治療院「feel」を開院しました。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイントによる痛みやコリの治療を専門とし、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、多岐にわたる慢性症状の改善を得意としています。
その治療技術は、鍼灸専門誌『医道の日本』にも紹介されており、エビデンスと経験をもとに、患者様一人ひとりの痛みの本質に迫る施術を行っています。