「肩が重い」「腰がだるい」「背中が張って眠れない」
そんな症状に、長年悩まされてはいませんか?
日々、当たり前のように感じているその“こり”——
実はあなたの筋肉が、静かに発している異常のサインかもしれません。

【そもそも筋肉は、なぜ凝るのか?】
「筋肉が凝る」とは、筋肉が緊張したまま弛まなくなっている状態です。
この背後には、複数の生理学的な要因が絡み合っています。
1. 血流不足と酸素欠乏
筋肉は動くことで血液を巡らせ、自らに酸素と栄養を供給します。
しかし、同じ姿勢を続けることや運動不足によって筋肉の動きが止まると、血流が滞り、必要な酸素が届かなくなります。
その結果、筋肉は「酸欠状態」となり、疲労物質が蓄積しやすくなります。
2. 老廃物の蓄積と痛みの信号
酸欠状態に陥った筋肉には、発痛物質や疲労物質が蓄積されていきます。
これらの物質は神経を刺激し、「痛み」や「重だるさ」といった不快な感覚を引き起こします。
3. 自律神経の乱れ
ストレスの多い現代では、交感神経が常に優位になりがちです。
交感神経が活発な状態では、筋肉も緊張モードに入ります。
「気が抜けない」「ずっと力が入っているような感じ」が続けば、筋肉はリラックスする時間を失い、次第に硬くなってしまうのです。
4. 筋膜の癒着・拘縮
筋肉を包む「筋膜」は、筋肉同様に柔軟性が求められます。
ところが、動かさない、偏った使い方を続けることで筋膜がよじれ、固まり、癒着や拘縮が起こります。
筋膜が固くなると、その下の筋肉も動きづらくなり、血流や可動性が制限され、結果的にコリが慢性化してしまいます。
5. カルシウムイオンの滞留と筋収縮の異常
筋肉が収縮するためには、カルシウムイオン(Ca²⁺)が必要です。
カルシウムが筋肉に流れ込むことで「縮む」指令が出され、役目を終えるとカルシウムは回収されて筋肉は「緩み」ます。
しかし、血流や代謝が悪い状態ではこの回収システムがうまく機能せず、
カルシウムが筋肉内に滞留して「縮んだまま戻らない」状態になります。
これが、慢性コリの本質です。
【セルフケアの落とし穴:伸ばすだけではなく、縮めることも必要】
「コリにはストレッチが効く」とよく言われます。
もちろん、ストレッチによって血流を促したり、筋膜の柔軟性を取り戻したりすることは有効です。
しかし実は、筋肉は“縮める”動作を伴わなければ、真の回復は望めません。
なぜなら、筋肉は
「縮む → 血液を押し出す → 緩む → 新たな血液を取り込む」
というポンプのような作用で、栄養と酸素の循環を維持しているからです。
つまり、縮めること(=筋トレ)を通して筋肉を使うことで、はじめて筋肉自身が「元気」を取り戻します。
ずっとストレッチだけしているのは、ゴムを引っ張るだけで一度も戻さないのと同じ。
使って、縮めて、循環を回してこそ、本来のしなやかさが生まれるのです。
まとめ:コリは「疲弊しきった筋肉からのSOS」
筋肉のコリは、
・血流の停滞
・酸素不足
・老廃物の蓄積
・自律神経の緊張
・カルシウム回収の不全
といった複合的な問題によって生まれます。
これらを改善するには、
一方的に伸ばすのではなく、適切に“縮める”ことも大切。
筋肉に「動く理由」を与え、ポンプ機能を活性化させる——
それが、凝りから脱却する本質的なセルフケアの考え方です。
「最近、身体が重く感じる」
「動くとだるくなる」「スッキリしない」
そんな違和感が続いている方へ。
まずは、身体を“ちゃんと使って”みましょう。
あなたの筋肉は、動くことで元気を取り戻してくれます。
適度な運動を取り入れ、フレッシュな血液を筋肉に届けてあげましょう!
『この記事の執筆者:佐野 聖(はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長)』
佐野聖は1995年に鍼灸マッサージ師(国家資格)を取得。8年間にわたり整形外科クリニックに勤務し、医師との連携による臨床経験を重ねたのち、2003年に横浜にて鍼灸マッサージ治療院「feel」を開院しました。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイントによる痛みやコリの治療を専門とし、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、多岐にわたる慢性症状の改善を得意としています。
その治療技術は、鍼灸専門誌『医道の日本』にも紹介されており、エビデンスと経験をもとに、患者様一人ひとりの痛みの本質に迫る施術を行っています。