
「最近、体が固まってるな…」
そんな思いから、ある方が久しぶりにストレッチ専門店を訪れました。施術中より強いなと感じていたそうで、終了時にはすでに違和感が。そして翌朝、ついに「ぎっくり腰」へと発展してしまったのです。
来院時には、典型的な急性腰痛症に見られる、腰をかばうような身体の歪みが顕著でした。
とくに「座った状態から立ち上がる」動作で激しい痛みが走り、日常動作にも大きな支障が出ていました。
丁寧に動作のパターンを検証した結果、今回の原因は大腰筋由来の腰痛と判断しました。
施術では、9cmの鍼を使用して大腰筋にアプローチ。かなり強いトゥイッチング(筋収縮)と響きを確認できました。
その後、大臀筋も含めて通電刺激(パルス)を加え、筋肉の動きを再活性化させる形で施術を終了しました。
ストレッチや整体で、痛みが悪化することも
今回のように、「よかれと思って受けた施術」が、かえって体を痛めてしまうケースは実際に少なくありません。
特に、強い圧迫や無理な可動域へのアプローチは、筋肉の反発や過剰な防御反応を引き起こし、ぎっくり腰や首・股関節の損傷につながる可能性があります。
当院にも、「ストレッチ中に腰を痛めた」「整体後から首が回らなくなった」といった理由で来院される方が、時折いらっしゃいます。
まとめ:体の声を無視しないために
「固いから、伸ばせばいい」
「痛いけど効いてる証拠」
こうした思い込みが、かえって体のバランスを崩し、トリガーポイントを刺激してしまうことがあります。
違和感や不安を感じたら、我慢せず一度、専門の視点で状態をチェックすることをおすすめします。
「気持ちよさ」と「安全」は、必ずしも一致しません。
ぜひ、あなたの大切な身体を守るために、“慎重に”選んでください。
この記事の執筆者:佐野 聖(はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長)』
佐野聖は1995年に鍼灸マッサージ師(国家資格)を取得。8年間にわたり整形外科クリニックに勤務し、医師との連携による臨床経験を重ねたのち、2003年に横浜にて鍼灸マッサージ治療院「feel」を開院しました。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイントによる痛みやコリの治療を専門とし、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、多岐にわたる慢性症状の改善を得意としています。
その治療技術は、鍼灸専門誌『医道の日本』にも紹介されており、エビデンスと経験をもとに、患者様一人ひとりの痛みの本質に迫る施術を行っています。