2024年を振り返ると、自律神経の乱れで来院された方がとても多い年でした。
今日は、呼吸と筋肉と自律神経についてのお話をしたいと思います。
私が自律神経の乱れを見極める一つの指標に、呼吸があります。
来院時の姿勢や、施術前や施術中のお話しの中で、呼吸の仕方、姿勢からその方の自律神経の緊張度を確認します。
当院で施術を受けられている中で、呼吸が浅いですねと言われた覚えのある方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
そういった場合には、呼吸筋を含めた筋膜リリースを施術に加えていきます。
一見、筋膜リリースと自律神経は関連の薄い感じがしますが、この後のお話を読んでいただけると少しわかるかもしれません。
まずは呼吸について
【呼吸】
呼吸は酸素を体内に取り入れ、二酸化炭素を体外に排出する生命維持に必要な活動です。
つい取り入れる(吸う)ことだけを考えがちですが、排出する(吐く)ことも大切なんです。
そして呼吸は、外呼吸と内呼吸に分けられます。
1.外呼吸(肺呼吸)
肺で行われる呼吸で、酸素を血液中に取り込み、二酸化炭素を排出します。
2.内呼吸(細胞呼吸)
血液中の酸素を細胞が利用してエネルギーを作り出します。
そして、呼吸には多くの筋肉が携わっています・・・
【呼吸筋】

図:青い部分が横隔膜・向かって右側の肋骨の間に見えるのが外肋間筋
呼吸をする時、肺そのものは動かないため、肺を膨らませたり縮めたりするのは筋肉になり、主に吸気筋と呼気筋に分けられます。
1. 吸気筋(息を吸うときに働く筋肉)
•主動筋(安静時の吸気)
・横隔膜(最も重要な筋肉)
横隔膜が収縮すると胸腔が広がり、肺が膨らんで空気が入ります。
•補助筋(努力性吸気時に働く筋肉)
・外肋間筋(肋骨を引き上げて胸郭を拡張する)
・胸鎖乳突筋、斜角筋群(首から胸郭を引き上げる)
・大胸筋、前鋸筋(強い呼吸が必要なときに動員される)
2. 呼気筋(息を吐くときに働く筋肉)
通常、安静時の呼気は筋肉の弛緩で自然に起こりますが、努力性呼気では呼気筋が動員されます。
•内肋間筋(肋骨を引き下げ、胸郭を縮める)
•腹筋群(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋:腹腔を圧迫し、肺から空気を押し出す)
呼吸と自律神経は密接に関係しており、呼吸は自律神経の働きに影響を与え、逆に自律神経が呼吸のリズムを調整する役割もあります。以下に詳しく説明します。
自律神経とは
自律神経は、意識とは無関係に身体のさまざまな機能を調整する神経系で、「交感神経」と「副交感神経」の2つがあります。
•交感神経: 活動時やストレス時に優位になり、心拍数や血圧を上げ、体を「戦う・逃げる」モードにする。
•副交感神経: リラックス時や休息時に優位になり、心拍数を下げ、消化・回復を促す「休息・回復」モードにする。
呼吸と自律神経の関係
1.呼吸の自動調整
呼吸は基本的に自律神経によって無意識のうちに調整されます。たとえば、運動中には交感神経が優位になり、呼吸が速く深くなります。一方、リラックス時には副交感神経が優位になり、呼吸はゆっくりで浅くなります。
2.呼吸による自律神経の調節
呼吸は自律神経が制御する機能の中で、意識的にコントロールできる唯一のものです。この特性を利用して、呼吸法によって自律神経のバランスを調整することができます。
•深い腹式呼吸 → 副交感神経が優位になり、リラックス効果が得られる。
•速い浅い呼吸(胸式呼吸) → 交感神経が優位になり、体が興奮状態に入る。
呼吸と自律神経の乱れの影響
ストレスや不安が続くと交感神経が優位になり、呼吸が浅く速くなることがあります。この状態が長期間続くと、自律神経のバランスが乱れ、睡眠障害や疲労、消化不良、免疫力低下などが起こる可能性があり、注意が必要です。
繰り返しになりますが、呼吸は自律神経が制御している機能の中で意識的にコントロールできる唯一のものです。
例えば、心臓の動きを自分の意思で変えられませんが、呼吸は違います。
呼吸筋の筋膜を緩め、呼吸をコントロールすることで、自律神経の乱れをさらに調整することができます。
睡眠のお悩み、頭痛・偏頭痛、生理痛、時には痺れなど自律神経の不調が関わる症状は多岐にわたります。
お心当たりの方は、お気軽にご相談ください。
=この記事は、鍼灸マッサージ師(国家資格)である当院院長の佐野聖が書いています=
「佐野聖は1995年の国家資格取得以降、臨床の第一線で活躍しており、その技術は鍼灸の専門誌である「医道の日本」において紹介されるなど、トリガーポイント・筋膜由来の痛みやコリの改善において高い評価を得ております」