横浜市のトリガーポイント鍼灸院 feel 院長の佐野です。
今回は、少しショッキングなタイトルではありますが、薬物乱用頭痛についてのお話です。

薬物乱用頭痛(MOH)/ 痛み止めを減らした後にも頭痛が続く理由と、トリガーポイント鍼で負担が軽くなる可能性
片頭痛や緊張型頭痛が続くと、「とりあえず痛み止めで抑える」という選択は自然なことです。
しかし、気づかないうちに薬の回数が増え、「薬を使っているのに頭痛が増えている気がする…」と感じていませんか?
その背景にあるのが 薬物乱用頭痛(MOH:Medication Overuse Headache) です。
当院にもこの悩みでご相談いただく方が増えており、この記事では薬物乱用頭痛とは何かなぜ薬を減らしても頭痛が続くのか、その離脱期の頭痛にトリガーポイント鍼が役立つ可能性実際の施術の流れまでわかりやすくまとめています。
薬物乱用頭痛(MOH)とは?
薬物乱用頭痛は、頭痛に対して使用する薬を高頻度で繰り返し服用することで、脳の痛みに関わる回路が敏感になり、頭痛が増えてしまう状態です。
【起こりやすい薬剤と使用頻度の目安】
NSAIDs(ロキソニンなど) … 月15日以上
アセトアミノフェン … 月15日以上
トリプタン製剤 … 月10日以上
複合鎮痛薬(カフェイン入り等) … 月10日以上
エルゴタミン製剤 … 月10日以上
“薬が効かなくなった”というより、脳が“薬がない状態”を不安定だと感じ、痛みを起こしやすくなるイメージに近いです。
薬をやめたのに頭痛が続く理由(離脱期)
薬の使用を減らすことは改善に向かう重要なステップですが、その過程で次のような症状がみられることがあります。
頭痛の一時的な増加
首肩こりの悪化
吐き気・倦怠感
集中力の低下
これは 離脱期 と呼ばれるものです。
■ 離脱期に頭痛が起きやすい背景
薬によって抑えられていた脳内の痛み調整が不安定になり、一時的に痛みを感じやすくなるためです。
さらに、首・肩・顎まわりの筋肉が強く緊張することが多く、この筋緊張が離脱期の頭痛を助長するケースも少なくありません。
離脱期の頭痛にトリガーポイント鍼が役立つ理由薬物乱用頭痛の方の多くに共通するのが、以下の筋肉に明確な緊張やトリガーポイントが存在することです。
後頭下筋群(大後頭直筋・小後頭直筋など)
側頭筋
胸鎖乳突筋(SCM)
僧帽筋上部〜肩甲挙筋
咬筋(食いしばり)
これらは頭痛の“入り口”とも言える部位で、筋肉の緊張や過敏状態が続くと、脳への痛み入力が増え、頭痛が起きやすくなります。
■ トリガーポイント鍼が負担軽減に役立つ仕組み
・過緊張している筋肉をピンポイントで緩める
筋線維の異常な収縮を鎮め、痛みの出やすい状態を落ち着かせやすくします。
・筋膜からの過剰な痛み入力を減らす
首肩の筋膜は頭痛との関連が強く、ここが整うと痛みの負担が軽くなることが期待できます。
・自律神経のバランスを整えやすい
後頭下筋群や胸鎖乳突筋は自律神経と密接に関わるため、鍼で緊張が和らぐと、離脱期特有の不安定さが落ち着きやすくなります。
・薬に頼らない“痛みの感じ方”への再調整を促す
身体全体の痛み感受性が整いやすく、離脱期のサポートとして相性が良いと考えられます。
当院でのアプローチ(施術の流れ)
薬物乱用頭痛は、適切な判断とケアを行うことで負担を軽減できるケースが多くあります。
当院では、次の流れでサポートしています。
① カウンセリング・評価
頭痛の頻度
使用している薬の種類や量
断薬・減薬の状況
首肩の筋緊張や姿勢
睡眠・ストレス・生活習慣
頭痛のタイプや改善の妨げになっている要因を確認します。
② トリガーポイント鍼 × 筋膜調整
後頭下筋群・胸鎖乳突筋・側頭筋を中心に、
頭痛と関連する筋肉を丁寧に整えていきます。
必要に応じて
咬筋(くいしばり)
僧帽筋上部
頭板状筋
前鋸筋
なども施術対象になります。
③ 自律神経を整える鍼(胸部・腹部・下腿など)
離脱期は自律神経が乱れやすい時期です。
身体全体の調整を行うことで、回復しやすい環境を作ります。
④ 生活習慣のサポート
カフェイン量
スマホ姿勢
枕や寝具の見直し
呼吸法やセルフケア
などを、無理なく実行できる範囲で提案します。
おわりに:頭痛の負担を少しずつ軽くしていくために
薬物乱用頭痛は、正しい理解と適切なケアを行うことで、症状が落ち着きやすくなるケースが多くみられます。
離脱期の頭痛はつらいものですが、首肩の筋緊張が大きく関わる場合には、トリガーポイント鍼が負担の軽減に役立つ可能性があります。
「薬を減らしたいけれど頭痛が心配」
「痛み止めの使用が増えて不安」
「もしかしてMOHかもしれない」
そんな方は、一度ご相談ください。
お身体の状態に合わせて、無理のないペースで頭痛の負担を減らすサポートを行っています。
=筆者:佐野 聖(さの ひじり)/ はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長=
1995年に鍼灸マッサージ師(国家資格)を取得し、整形外科勤務からキャリアをスタートしました。臨床の現場で数多くの症例に携わる中で、痛みの多くが筋肉や筋膜に由来することに注目し、2003年に横浜で「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を開業。筋筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイント治療を専門に据え、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、慢性的な痛みに取り組んできました。
その治療技術や臨床経験は、鍼灸専門誌『医道の日本』でも特集として紹介されています。