トリガーポイント・筋膜リリースの鍼灸院 feel 院長の佐野です。
筋トレを継続されている50代男性の症例をご紹介します。
約2年間、トレーニングのたびに繰り返されていた「左肩前方奥の痛み」が、トリガーポイント鍼施術で改善したケースです。
■ 症状
ウォームアップとしてバーにぶら下がる際に...
- 左肩前方の奥が必ず痛む
- 関節の中が痛い感じ
- 少し慣らすと徐々に消えるが、次のトレーニング日には再発
- 日常生活では支障はないが、常に「肩が詰まっている」感覚がある
2年以上、同じ症状を繰り返していました。
■ 原因:三角筋前部トリガーポイントと上腕二頭筋長頭腱のストレス
肩前方の奥の痛みは、三角筋前部の深部トリガーポイントによって引き起こされることが多くあります。
さらに今回は、上腕二頭筋長頭腱(LHBT)への連続的な機械的ストレスが感作を強めていました。
筋膜・腱・付着部は張力が集中しやすい構造”のため、反復的な筋収縮によって感作が進行しやすいことが知られています。
長頭腱は結節間溝を滑走しながら肩前方を通過するため、懸垂やプレス系動作で負荷が蓄積すると
三角筋前部
長頭腱
肩前方の関節包
の複合的ストレスとして痛みが出やすい特徴があります。

*青:三角筋前部と外側の中部

*三角筋を取り除いた図、青い部分が上腕二頭筋の長頭
■ 施術内容
① 肩周囲筋膜の全体的リリース
大胸筋、肩甲下筋、三角筋、上腕二頭筋周囲を広い範囲で緩め、肩前方にかかる筋膜の張力を減らします。
筋膜は、構造上「滑走性」「伸張性」が負荷によって変化するため、最初に広域の緊張を整えることで後の施術効果が高まります。
② 三角筋前部の責任トリガーポイントへ鍼
圧痛と関連痛が再現されるトリガーポイントに対し刺鍼します。
③ 長頭腱周囲の滑走性改善
腱そのものではなく、周囲の腱鞘・筋膜にアプローチし、動作時の摩擦・拘縮が減るよう調整します。
■ 結果
施術の数日後、懸垂動作を再現したところ
- 痛みの消失
- 肩周りの軽さ
- 姿勢が整った感覚
が得られ、「2年以上悩んでいたため、もっと早く治療を受けていれば良かった」というご感想をいただきました。
■ なぜ短期間で改善したのか
反復動作による感作部位が集中していたため
筋膜・腱の付着部は、反復刺激で敏感になりやすい構造があります。
筋膜の滑走不全は、局所治療で大きく改善しやすい
筋膜は軽度の負荷でも動的に変化するため、適切な刺激により可動域が回復しやすい。
痛みの発生源が肩関節の奥ではなく三角筋前部+長頭腱周囲にあったため
体感と原因が異なる典型例であり、ポイントを捉えると改善までが早い症状でした。
■ 同様の症状がある方へ
以下のような症状は、今回と同じしくみで起こっている可能性があります。
- 懸垂・プレスで肩前方が痛む
- 肩前方が常に詰まる
- 長頭腱炎の疑いで治療を続けても改善しない
- トレーニング後に肩が前に入りやすい
三角筋前部の深部トリガーポイントと長頭腱の滑走不全は、適切なアプローチにより大きく改善が期待できます。
日常生活で、肩に不調がある方も是非ご相談ください。
発痛動作や姿勢を確認して、原因ポイントを見つけ出し施術いたします。
=筆者:佐野 聖(さの ひじり)/ はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長=
1995年に鍼灸マッサージ師(国家資格)を取得し、整形外科勤務からキャリアをスタートしました。臨床の現場で数多くの症例に携わる中で、痛みの多くが筋肉や筋膜に由来することに注目し、2003年に横浜で「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を開業。筋筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイント治療を専門に据え、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、慢性的な痛みに取り組んできました。
その治療技術や臨床経験は、鍼灸専門誌『医道の日本』でも特集として紹介されています。