トリガーポイント・鍼灸治療のfeel 院長の佐野です。
50代男性の方が「右中指を強く握り込むと痛みが出る」という症状で来院されました。
日常生活ではほとんど痛みはなく、筋トレも週3回、フリーウェイトを中心に継続されています。
ベンチプレスは問題ありませんが、ダンベルベンチプレスでボトムから押し上げる初期動作の際に、肘の内側に軽い痛みと張り感
を感じるとのことでした。
また、腕全体がこわばる感じや、重さを感じることが時々あるという訴えもありました。
指は曲がるが、握り込むと痛い
評価を進めると、
- 中指の可動域は保たれている
- 筋力も低下していない
- ただし強く握り込む動作でのみ痛みが出る
という特徴がありました。
このパターンでは、腱や関節の炎症よりも筋肉同士の連動の乱れ(使いすぎ・制御不全)が関与していることが多く、特に今回は、虫様筋(手のひらの深層)・方形回内筋(前腕の最深層)この2つの筋の影響が非常に強い状態でした。

青:虫様筋(手のひら側から見た図)

青:円回内筋(手のひら側から見た図)
虫様筋と方形回内筋が関与すると何が起こるか
虫様筋は、指を「曲げる」「伸ばす」という単純な動きではなく、握る・支える・力を逃がすといった微調整を担う筋肉です。
この筋に負担が集中すると、指は曲がるしかし力を入れた瞬間に痛みが出るという状態になりやすくなります。
一方、方形回内筋は、前腕の最も深い位置で、前腕を安定させながら回内させる筋肉です。
特にダンベル種目では、この筋が無意識に働き続けるため、過緊張が起こると肘の内側の違和感、前腕から指への張力の伝わり方の乱れにつながります。
また、この乱れによる影響は、中指に限らず全ての指に影響を及ぼす可能性があります。
1回目の治療後の変化
虫様筋と方形回内筋を中心に、前腕〜手部のトリガーポイント鍼治療を行いました。
治療後、中指の痛みは 約半分まで軽減腕全体のこわばりは かなり軽くなった、という明確な変化が見られました。
ただしその後、上腕の内側と前腕の外側に重さを感じるようになったとのこと。
これは症状の移動ではなく、深層の緊張が抜けたことで、次に負担が残っていた部位が表に出た状態と判断しました。
2回目の治療での調整
2回目は、虫様筋・方形回内筋の影響を踏まえつつ、
- 上腕内側
- 前腕外側
- 押す・握る動作に関与する連動筋
へアプローチを調整。
結果として、
- 中指の痛み
- 肘内側の違和感腕の重さ・張り感
いずれも改善が見られました。
今後の方針
現在は症状が安定しているため、トレーニングを継続しながら経過観察とし、次回は 1ヶ月後のメンテナンスをご案内しています。
まとめ
今回の症例で重要だったのは、痛みの出ている中指ではなく、その動きを支えている深層筋に原因があったという点です。
特に
フリーウェイト
ダンベル種目
握力を使うトレーニング
を行う方では、虫様筋や方形回内筋のトラブルが、指や肘の痛みとして現れることは珍しくありません。
また、原因はトレーニングに限らず、歯科医など手を使うことの多い職業や、腕をぶつけたなどの外傷後に起きることもあります。
トリガーポイント鍼治療では、症状のある場所だけでなく動きの中で負担が集中している筋」を見極め、根本から整えていきます。
同様の症状でお悩みの方は、早めのケアをおすすめします。
また、前述のようにどの指に症状が出てもおかしくありませんし、複数の指に出ることもありますし、腱鞘炎と診断されている方も、原因はトリガーポイントということが多くあります。
腱鞘炎は、結果であって原因ではありません。
ご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください。
=筆者:佐野 聖(さの ひじり)/ はり・きゅう・マッサージ治療院 feel 院長=
1995年に鍼灸マッサージ師(国家資格)を取得し、整形外科勤務からキャリアをスタートしました。臨床の現場で数多くの症例に携わる中で、痛みの多くが筋肉や筋膜に由来することに注目し、2003年に横浜で「はり・きゅう・マッサージ治療院 feel」を開業。筋筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイント治療を専門に据え、肩こり・腰痛・坐骨神経痛・五十肩・頭痛など、慢性的な痛みに取り組んできました。
その治療技術や臨床経験は、鍼灸専門誌『医道の日本』でも特集として紹介されています。