こんにちは。
トリガーポイント鍼治療 feel の広末です。
今日は、実際に当院で鍼治療を受けられた方の体験をもとに、治療後に一時的に痛みが増す理由と、その後に起こるからだの変化についてお話しします。
鍼治療を受けたあと、「いつもと違う痛みが出て不安になった」「これって悪い反応なのでは?」と感じた経験はありませんか。
本記事では、治療後に違和感や痛みが出る理由を、実際の患者さまの声とともに、DNIC(広汎性侵害抑制調節)という身体の仕組みから解説していきます。
「なぜ一度つらく感じるのか」「その後、体の中で何が起きているのか」を知ることで、鍼治療に対する不安が和らぎ、安心して施術を受けていただけるはずです。ぜひ最後までご覧いただき、ご自身の体の変化を理解するヒントにしてみてください。
■ 「治療の翌日に、違う種類の痛みが出て…」
先日、腰痛でご来院された女性の患者さまがいらっしゃいました。
トリガーポイント鍼治療を行った翌日、こんなご連絡をいただいたのです。
「鍼を受けた後、いつもの腰痛とは違う“ズーンとした痛み”が出てしまって…。
少し不安になったので、次回の予約はキャンセルしたいです。」
もちろん、不安なお気持ちはよくわかります。
初めての治療や、普段と異なる感覚に驚かれるのは自然なことです。
そこで一旦、次回のご予約はキャンセルさせていただきました。
■ ところが、その2日後…
その方から、再びご連絡がありました。
「あれから体がとても楽になって、驚いています!改めて予約を取り直したいです。」
治療直後の「一時的な反応」を越えたところに、本来の改善が待っていたのです。
■ なぜこういうことが起こるのか?──DNICという身体の仕組み
これは、「広汎性侵害抑制調節(DNIC)」という生理的なメカニズムに関係しています。
トリガーポイント鍼治療では、あえて“痛みのセンサー”に働きかける刺激を加えることで、
脳や脊髄の中で「もうこれ以上、痛みを感じないようにしよう」という**抑制システム(DNIC)**が作動します。
その過程で、一時的に筋肉痛のような重だるさや、異なる種類の痛みを感じることがあります。
これは、体が“再起動”しようとしているサインでもあるのです。
このような反応は、俗に「好転反応」と説明されることもあります。
好転反応とは、主に民間療法や健康食品の分野で使われる言葉で、施術後に一時的なだるさや痛み、不調が現れる現象を指します。
両者は「施術後に一時的な不調が出る」という点では共通していますが、厳密には同じ意味ではありません。当院では、感覚的な表現だけに頼らず、身体の仕組みに基づいた説明を大切にしています。
■ 体が変わる前には、一度揺れることがある
鍼治療は、表面的な症状だけでなく、深部の筋肉や神経のバランスにも作用します。
そのため、治療のあとに体が“揺れ戻し”のような反応を見せることは珍しくありません。
ですが、これは悪い反応ではなく、
変化が起こっている証拠です。
今回の患者さまのように、2~3日後に
「明らかに楽になった」
「動きやすくなった」
と実感される方は非常に多くいらっしゃいます。
■ 最後に:どうぞご安心ください
万が一、治療後に不安な変化を感じた場合は、いつでもご連絡ください。
その方の体調や反応に応じて、刺激量の調整や施術方法の変更を行うことも可能です。
私たちは、単に“その場の痛みを取る”のではなく、
本質的な回復を目指したサポートを行っています。
あなたの体の声に、しっかり耳を傾けながら、無理のないペースで前に進んでいきましょう。
【DNIC:広汎性侵害抑制調節】

─「別の痛み刺激」によって、もとの痛みが和らぐメカニズム
この図は、DNIC(Diffuse Noxious Inhibitory Controls)=広汎性侵害抑制調節を表したものです。
左側の人の体にある痛み刺激A(例:腰の痛み)が、脊髄を通って脳に伝わります。
次に、別の場所に痛み刺激B(例:膝の強い鍼刺激など)が加わると…
脳と脊髄は「全体の痛みの量を抑えよう」と判断し、痛み刺激Aが抑制される仕組みが働きます。
これが、鍼治療によって一時的に痛みが強く感じられることがあっても、その後に痛みが軽減する理由の一つです。